STAY HOME需要で調理家電の販売増が顕著です。
ブームが去ってしまい細々と製造されていたホームベーカリーが急に日の目を見たり、ホットプレートやたこ焼き器は軒並み前年倍増。
その中で思ったより伸び率が低かったのが「炊飯器」
多くの人がクッキーを焼いた様子をSNSでアップしたのに、炊飯器でケーキを焼いているのはあまり見かけませんでしたね。
ようやく最近になって「炊飯器で○○が調理できる」系のバラエティ番組やらなんやらを見かけるようになり、それらを微笑ましく眺めておりました。
炊飯器でステーキは焼けるのか
人様のお宅で何をどう食べようが自由なのでケチをつけるのも無粋なのですが
『教えてもらう前と後』というテレビ番組で
「牛肉をお米の上に乗せて、そのまま炊飯ボタンを押すだけでステーキ&ご飯!」
というあまりにも酷いレシピを紹介していたので、流石にコレはいかんと思ってブログを書いた次第です。
試さずに批判するのはよくないので、実際に番組で紹介されたレシピ通りにお米の上に肉を載せて炊いてみました。
結果がこちらです。
炊飯器はメニュー毎の調理に最適化された家電
そもそも炊飯器というのは、ご存知の通りお米を美味しく炊くための家電です。
※方式やら選び方は書くのがめんどくさいのでか価格comのコンテンツでも読んでください。
お米を美味しく炊くために炊飯器に求められる要件として
「高火力」「対流」「緻密な温度コントロール」が挙げられます。
伝熱性の高い窯を使い、大きな熱対流を生む技術を持ち、炊飯に適した温度コントロールをするマイコン制御がされている炊飯器が良い炊飯器です。
なので美味しいご飯を食べたいのであれば分厚い窯で熱対流が大きく炊飯メニューが豊富な炊飯器を選ぶのが良いでしょう。
では、今回の炊飯器調理に戻ります。
牛肉をお米の上に乗せて炊飯ボタンを押すと、先ずお米の対流が妨げられますね。
下の写真はお肉を乗せて炊飯したお米です。中央部のお米を観てください。
外側のお米に比べてべっちゃっとしていて米粒同士がくっついるのが分かりますね。
上に重い牛肉が蓋をしてしまっているので当然の結果です。
次に温度コントロールです。
ちゃんとした炊飯器は「はじめチョロチョロ中パッパ」的な温度制御がされています。
時間による温度管理はもちろん、工程やメニュー毎にかける圧力もコントロールされています。*1
ではお米を美味しく炊くために計算された温度管理は牛肉のステーキを作る際の温度変化に最適なものでしょうか。
ついでに鉄板でステーキを正しい工程で焼きます。
そして炊飯器で炊いたステーキ(?)と一緒にお皿に盛りましょう。
ついでにビールも飲みましょう。
左手が鉄板で焼いたステーキで、右手が炊飯器に放り込んだ牛肉です。
炊飯器に入れた牛肉は旨味が完全に抜けていて味気なく、噛み締めても肉汁なんて出るはずがありません。油も旨味もお米が吸っています。
美味しさでいうと、鉄板で焼いたステーキを100とすると炊飯器は0.4くらいでした。*2
先人が作り上げた料理の工程にはそれぞれ意味があります。
火が通るからと炊飯器に放り込んだだけで「調理」ができると思ったら大間違いです。
炊飯器調理の全てがダメではない
ただ、炊飯器調理の全てがダメかというとそうではありません。
お米と一緒に炊くのが悪いので、ステーキでも下味をつけた牛肉をフリーザーバッグに真空パックし、水を張った炊飯器で保温→フライパンで焼くという工程だと美味しく調理できると思います。
タイガー魔法瓶にJPK-A100という炊飯器があります。
2019年モデルからすると上から7番目の決して上位機種ではない炊飯器ですが、メニューの数はタイガー魔法瓶の中で随一です。
「スポンジケーキ」「肉じゃが」「ブイヤベース」などの調理に最適化されたメニューが存在します。
これらは最適な温度管理がされるメニューですので積極的に使っていきましょう。
さらに炊飯器の技術から発展した調理家電として、SHARPのホットクックや象印マホービンの自動圧力IHなべ EL-MB30 が存在します。
より美味しく調理を家電に任せたいのであればこれらを導入するほうが賢明です。
私も使っていますが低温調理器もとても良い物です。
なんだかんだと文句をたれましたが、番組の本旨は、新しい家電を買わずとも今ある炊飯器でお米を炊くのと同時に具材を入れることでなんちゃって調理をすることですので、そういった要望に対して適した家電を買えというのはナンセンスですね。
万人が「たちの鮨」を求めているわけではなく、チェーンの回転寿司にはチェーンの回転寿司の良さがあるのです。
最初はこの記事の終わりに「やってみたら、なんだかんだで美味しかった」というチャラけた内容でオチを付けようと思ったのですが、実際に作ってみたらあまりにも美味しくなかったのでこんなことになってしまいました。
あなたが持っている炊飯器のメニューをうまく使いこなしましょう。