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ひたすら音楽に向き合えるDAP Lotoo PAW6000 レビュー

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これまでSONYのウォークマンNW-ZX300を使ってきましたが、より良い音楽体験を得るためにDAPの買い替えをすることを決めました。

様々な機種を比較検討した結果、中国の放送用機器を製造するINFOMEDIA社のポータブルオーディオプレーヤーブランドLotooが2019年に発売したPAW6000を今年の1月に購入しました。すっかりレビュー記事を書くのを忘れていましたが、9ヶ月ほど使い込んだので感想文を残しておきます。

 

まずは結論から。

Lotoo PAW6000はこんな人に向けたDAPです。

  • 有線接続でイヤホンを使う人向け
  • ストリーミングではなくローカルの音楽ファイル再生向け
  • ド派手なデジタルミュージックよりも生楽器で演奏された曲向け

 

Lotoo PAW6000 レビュー

Lotoo PAW6000は2018年に発売されたPAW GOLD TOUCHの弟分とも言えるプレーヤーです。

Lotoo PAW6000とPAW GOLD TOUCHの主な違いはDACチップの違いと出力です。

もしもあなたがヘッドホンをメインに使うのであればPAW GOLD TOUCHの方が優れた選択肢でしょう。もちろん価格が2.5倍違うことも考慮しないといけません。

また再生可能時間も異なります。毎日の充電が面倒なのであればPAW6000を選ぶ理由になります。

 

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ヘッドフォン・ライン出力端子は3.5mmのアンバランスと4.4mmのバランスです。

ウォークマンNW-ZX300を使っていると露骨にバランス接続のほうが良好な結果が得られるように調整されていますが、PAW6000はアンバランスでもバランスでもどちらも音楽に没頭できました。もちろんそれぞれに差異はありますが好みの問題でしょう。あなたが今気に入っている3.5mm3極プラグのヘッドホンやケーブルを使っているのであればわざわざ4.4mm5極のものに買い換える必要はありません。

 

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PAW6000の最大出力は300mWで、これはPAW GOLD TOUCHの500mWに劣りますが、私が愛用しているインピーダンス32Ωの Mitchell and Johnson JP1でも気持ちよく鳴らすことができました。これはウォークマンNW-ZX300を利用した場合に比べて顕著なアップデートで、ポータブルアンプを使わなくてもある程度のヘッドホンの実力を引き出すことができそうです。

 

Lotoo PAW6000の音質レビュー

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肝心なPAW6000の音質の評価を早めにしておきます。

 

初めてPAW6000で曲を聴いたときには少し戸惑いがありました。とても地味なサウンドだったからです。

いつも聞き慣れたバンドの立ち位置を一度リセットして、真っ暗なステージにそれぞれの演奏がわかるように丁寧に再配置をしたような感覚でした。

とても静かなステージに間隔を置いて演奏者が立っているイメージです。

これに慣れてくると、その空間はそれぞれの楽器の音を細かく聞き取れることができ、心地よくなりました。

 

やや遠くから音が流れてくるようなPAW6000の音が少し苦手だという場合には、エフェクトを活用しましょう。

特に「Headphone」のエフェクトは、ボーカルや楽器が一歩前に寄ってくるイメージになりロックバンドの曲を聴くのにおすすめです。

 

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例えば兵庫のポストロックバンド EMIRIの「oyasumi」

www.youtube.com左右のギターはあまりにも明瞭で頭上で鳴るハイハットの音は澄んでいて、芯に残るベースは淡々とリズムを残してくれます。

 

例えば日本のエモシーンの重要バンド The Firewood Projectの「Ghost」

www.youtube.com

エモらしいギターアンサンブルがまるでステージを観ているかのようにハッキリと像を結んでくれます。

 

例えば上白石萌歌、adieuにFINLANDSの塩入冬湖が楽曲提供した「よるのあと」

www.youtube.comあまりにもストレートなその声は印象的に残り、ときに最初のブリッジが終わった後の静寂は息を呑むよう。

 

そしてこれはもしかすると良くないことなのかもしれないのですが、PAW6000は音量を上げてもうるさくないのです。

殆どのプレーヤーは音量を上げ、いわゆる爆音の状態だと耳が痛くなりとてもではないが聴いていられなくなりますが、PAW6000は音量を上げてもまるで耳が痛くならないし音は破綻するどころか楽器の音はより鮮明になるのです。

ただこれは難聴のリスクを高めてしまうので、いくらより良い音を求めるのだとしても控えなければなりません。

 

Lotoo PAW6000のBluetooth接続

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Lotoo PAW6000はBluetooth4.2による接続が可能です。

コーデックはSBCのみで、スマホなどとのBluetoothレシーバーとしても働きます。

 

Lotoo PAW6000のBluetoothによる接続時の音質にはがっかりしました。

もしあなたがiPhoneを持っているのであれば、Bluetooth接続したイヤホンはiPhoneで使ったほうが良好な音質を得られます。

 

Lotoo PAW6000に使うイヤホンやヘッドホンは有線であるべきです。

 

<追記>

ファームウェアのアップデートでLDACでの接続が可能になりました。

LDAC接続時の音質は良好です。

 

Lotoo PAW6000の発熱

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Lotoo PAW6000は購入すると革のケースが付属しています。

このケースに入れて使用していた限り、Lotoo PAW6000は夏場に手で持ちながら聴くのはやめておいたほうが良い程度には発熱します。

それは「熱い」とまではいかないが「温かい」とは感じるものです。

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携帯性にすぐれたウォークマンNW-ZX300に比べると厚みがあるので、ズボンのポケットに入れるのにはあまり適していないようです。

 

 Lotoo PAW6000の操作感

Lotoo PAW6000は本体の起動がわずか2秒ととても早く、操作もしやすいプレーヤーです。

 

タッチパネルはスマホと同じ感覚で操作するとやや感度が低く感じますが、概ね迷うことなく操作することができます。

操作しているところを動画に録ったので合わせて御覧ください。

www.youtube.com

Lotoo PAW6000の楽曲管理とプレイリスト

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Lotoo PAW6000には内蔵ストレージがありません。microSDカードに楽曲を入れて持ち運びます。

あなたが内蔵HDDとmicroSDカードの音質差を機敏に感じ取れるのであれば、精神衛生上PAW6000は選ばないほうが良いかもしれません。

 

PCから楽曲を転送するにあたって専用の転送ソフトは付属しません。

私はiTunesで管理をしていますが、MUSICフォルダからアーティスト名のフォルダをmicroSDカードのMUSICフォルダへドラッグ&ドロップしています。

 

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 「THE」から始まるアーティストと「The」から始まるアーティスト「the」から始めるアーティストは区別して表示されます。

それ以外の日本語への対応は万全で、文字が簡体になるなどの不具合はありません。

 

 

アーティストや曲を検索する際に、スクロール・スライドバーの動きは一定でなかなか下までたどり着けない場合は、画面上部を下へフリックすると検索窓が現れます。

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この検索は非常に速く・賢く、アーティストとアルバム・曲をそれぞれを別に検索してくれます。

 

一方で、PAW 6000はプレイリスト管理がPCと連動させにくい欠点があります。

PAW6000のプレイリスト形式は

  • 文字コード:UTF-8
  • 拡張子:.m3u
  • パス表記:相対パス

iTunesのプレイリスト形式は、PCの絶対パスを表記しているため、何らかのエディタを使って加工する必要があります。


ウォークマンのプレイリストは相対パスですが、iTunesからプレイリストをインポートできるため「Content Transfer」を使って一度ウォークマンにプレイリストを移したmicroSDカードをPAW6000に戻してはどうかと考えましたがこれは適当ではありませんでした。

  • ウォークマン本体を接続しないとインポートできない
  • そもそもmacOS CatalinaにContent Transferが対応していない

 

他にもいくつかプレイリストを移す術を考えましたが、いずれにしても手間がかかりました。結局プレイリストを作成するのであればPAW6000本体で作成するのが最も合理的な方法です。その際は再生キューの機能を使うのが便利です。

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アーティスト・アルバム・曲いずれかの「次の再生」を予約することができます。

こうして登録した楽曲を再生します。プレイリスト作成が目的であればもちろん最後まで聴かずにスキップしても構いません。

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そうするとプレイリストの右タブ「最近再生した曲」の中に曲が表示されますので、画面右上のリストアイコンをタップして、プレイリストに入れたい曲にチェックを入れ、画面下部に表示される「プレイリストに追加」を押すだけです。

 

Lotoo PAW6000はこんな人におすすめ

Lotoo PAW6000はとても静かな空間の中で演奏一つ一つを感じながら聴くことができる優秀なプレーヤーです。

 

Bluetooth接続は可能なもののその音質には期待ができないので、有線のイヤホンがもっとも適した相棒ですが、それほど出力を要求しないヘッドホンでも快適に音楽を楽しむことができます。

 

ストリーミング再生には全く対応していないので、レガシーなCDメディアやダウンロード楽曲を中心に聴いていることが前提です。

 

保有している音楽ファイルを有線のイヤホンでじっくり聴く。

そんなシンプルな使い方を求めているのであればPAW6000がきっと気に入ります。

もちろん私もPAW6000を非常に気に入っています。

 

あなたのDAP選びの一助になれば。

 

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Lotoo PAW6000の仕様

対応フォーマット DSD64/128/256 DFF / DSF / ISO
PCM 44.1-768kHz FLAC / APE / WAV / AAC
ALAC / MP3 / M4A / WavePack / OGG
DACチップ AKM4493EQ
ヘッドフォン・オペアンプ OPA1622
USB USB3.1 Type-C
ストレージ micro SDカード(2TB最大)
バッテリー容量 5200mAh
Bluetooth対応コーデック SBC
サイズ 112×65×18mm(突起物を含まず)
重量 225g

バランス・ヘッドフォン出力(4.4mm)
 
周波数特性 +0.004/-0.254 dB (20~20kHz)
THD+N 0.00022% @1kHz(20~20kHz, A-weight, No load)
S/N比 121dB(20~20kHz,A-weight)
出力レベル +12dBu(high gain) -5.6dBu(low gain)
チャンネル・セパレーション -135dB
ダイナミック・レンジ 122dB@1kHz (20~20kHz,A-weight)
ノイズフロア -120dBu
最大出力 300mW/Ch(32Ohm Load)

アンバランス・ヘッドフォン出力(3.5mm)
 
周波数特性 +0.005/-0.259 dB (20~20kHz)
THD+N 0.00025% @1kHz(20~20kHz, A-weight, no load)
S/N比 121dB (20~20kHz,A-weight)
出力レベル +12dBu(high gain) -5.6dBu(low gain)
チャンネル・セパレーション -120dB
ダイナミック・レンジ 122dB@1kHz (20~20kHz,A-weight)
ノイズフロア -118dBu
最大出力 300mW/Ch(32Ohm Load)

バランス・ライン出力(4.4mm)
 
周波数特性 +0.004/-0.254 dB (20~20kHz)
THD+N 0.00022% @1kHz(20~20kHz, A-weight, no load)
S/N比 121dB (20~20kHz,A-weight)
出力レベル +8.24dBu/+4.0dBu/0dBu
チャンネル・セパレーション -135dB
ダイナミック・レンジ 122dB@1kHz (20~20kHz,A-weight)
ノイズフロア -120dBu

アンバランス・ライン出力(3.5mm)
 
周波数特性 +0.005/-0.259 dB (20~20kHz)
THD+N 0.00025% @1kHz(20~20kHz, A-weight, no load)
S/N比 121dB (20~20kHz,A-weight)
出力レベル +8.24dBu/+4.0dBu/0dBu
チャンネル・セパレーション -120dB
ダイナミック・レンジ 122dB@1kHz (20~20kHz,A-weight)
ノイズフロア -118dBu