まるでスピーカーのような再生空間を表現するイヤホンとしてクラウドファウンディングでも話題を集めたArtioのCR-V1を手に入れたので、本当に普通のイヤホンと違うのか聴いてみました。
Artio CR-V1の音質はどうか
Artio CR-V1の特徴は、左のイヤホンに右のイヤホンの音を少し混ぜ右のイヤホンに左のイヤホンの音を少し混ぜる「WARPシステム」によって空間表現をすること。
通常人間の耳は空間の中で反射された音を知覚しているのに対し、イヤホンやヘッドホンでは反射されていない音源がダイレクトに耳に入ってくるため音の立体的な出場所を認識するのが難しいとされています。そのためオーディオ趣味でもスピーカーとイヤホン・ヘッドホンは別物とされてきました。
本当にCR-V1はスピーカーのような頭内定位をするのか聴いてみました。
<再生環境>
DAP:SONY WALKMAN NW-ZX300 3.5mmアンバランスでの接続です。
結論から言うと、
Artio CR-V1はスタジオ録音された楽曲を聴いてもあまり意味がないけれども、ライブ音源やライブ映像を観る時に使うと、もう他のイヤホンやヘッドホンには戻れない独特の音楽体験ができます。
通常のスタジオ録音の楽曲を聴いた時には、時計の4時20分と7時40分くらいの後頭部方向から音が飛んで来るイメージです。確かに通常のイヤホンとは異なる頭内定位になりました。
それは普段自宅でスピーカーを鳴らしている場合の音像とは全く別物で「スピーカーのような」という表現とは違います。
筐体のチタン合金が演出する「チタンぽい」金属感の強い高域が印象に残るイヤホンですが、私が聴くようなバンドサウンドには合いませんでした。
しかし一度音源をライブ音源にすると、その表情は一変します。
まずはSuspended4thの路上ライブ音源 『20190121』にすると、4人の立ち位置がはっきりと浮かび上がり自分も歓声を上げる聴衆に混じったかのような錯覚をします。
この音源、横断歩道の「ピコッピコッ」という電子音が入っているのですが、この音が出ているスピーカーの位置がはっきり見えます。すごい。
Suspended 4th - ストラトキャスター・シーサイド (incl.VENETZIA) [YouTube Music Sessions]
続いてKOTORIのシングル『RED』のカップリング曲「トーキョーナイトダイブ」のライブ音源を聴いてみます。
これ完全にライブハウスで聴いているのと同じやつだ!スピーカーの音がするというのは、自宅の据置きスピーカーのイメージでしたがライブハウスのスピーカーか!と膝打ちしました。
KOTORI - 素晴らしい世界 [YouTube Music Sessions at FUJI ROCK FESTIVAL’19 "ROOKIE A GO-GO"]
最後に2015年のXmasに行われた木村カエラ昭和女子大学人見記念講堂ライブ。ストリングスを交えたこの日限りの特別なアレンジを加えたライブ音源は配信限定で購入できます。
これもあの日のあのステージで聴いていた音に近い!と興奮しました。ホールの空気感や楽器の位置、観客の位置も再現されているように聴こえました。
木村カエラ - LIVE 『CHRISTMAS~Say ho-ho-ho!!~』 FLASH MOVIE
所有のイヤホンやヘッドホンととっかえひっかえしてみましたが、ライブ音源を聴くのにCR-V1以上に適したイヤホンはありませんでした。
さらに音楽鑑賞に限った話ではなく、ライブDVD/BDを楽しむ時やスマホで動画鑑賞するのにも相性抜群です。
Nintendo Switchでも使ってみました。ゲームも立体的な音は大好物ですね。
他にもアコースティックの弾き語り音源なども空気感が出て非常に楽しめました。
Artio CR-V1は「スピーカーのようなイヤホン」というと少し広義になってしますので、「生音源の空気感を伝えるようなイヤホン」がしっくり来るキャッチコピーではないでしょうか。
Artio CR-V1使用感などレビュー
続いてArtio CR-V1の音質以外をレビューしていきます。
まずはパッケージ。さすがクリエイティブにも力を入れているArtio、初見でイヤホンが入っているとは思えません。
内箱もクールです。CR-V1はメイド・イン・ジャパンなので海外の友人のお土産に持っていたら喜ばれそうな気がします。
付属品はケーブル2種とイヤピースにイヤーフックです。
リケーブルが可能なのですが、イヤホン側の端子が2.5mm3極と特殊なため今の所付属品を使うか自作するしかありません。下位機種のCR-M1は1本しかケーブルがありませんが、CR-V1はシルバーと銅線の2本のケーブルが付属しています。別売りで3000円程度で追加購入も可能です。
イヤーピースはfinalのEタイプが付属しています。
Artio CR-V1の最もネガティブなポイントは装着感が信じられないくらい悪いことで、重いハウジングが耳にフィットする構造ではないためイヤーピース選びが非常に重要です。うっかりSpinfitなど使うとスカスカになるので注意。
私はAZLA Sednafitの無印に落ち着きましたが、しっかりとホールドできるものを選ぶのが良いです。
またSHURE掛け前提のArtio CR-V1はケーブルにワイヤーがついておらず、なかなかホールドができません。付属のイヤーフックでは心もとないので、finalのイヤーフックを使うと装着感が安定します。
ハウジングはずっしりと重いチタン合金。デザインはArtio RK01の方が好きです。
写真には写っていませんが小さなベントホールがあります。イヤピース次第ではありますが、街の雑踏野中や電車内では使いにくいイヤホンなので音漏れはあまり気にしなくても良いです。
ALO audioのポタアンRxに接続したところ、空間が急に狭まりました。当然好みによりますが上流は音場が広めのものを選ぶと良さそうです。
Artio CR-V1はこんな人におすすめ
Artio CR-V1はスタジオ録音された楽曲や電子音楽とは相性が悪いですが、ライブ音源や生音源には抜群の空間表現をするイヤホンです。
ライブ映像を観る時やサラウンド表現のあるゲームなどでも他のイヤホンにない音楽体験ができます。特にライブDVD/BDをたくさん観る方におすすめです。
また通勤時や街中など騒がしい環境では使いにくいですが、室内でゆっくり音楽を楽しむ際の選択肢として有用です。
イヤホンマニアによる「イヤホンは使い分ける」はまさにこのCR-V1のためにあるような言葉です。あなたのイヤホンコレクションにも是非加えてください。
CR-V1 付属品
付属ケーブル約1.2m(Y型) / Φ3.5mm金メッキプラグ(L型)OFC線スパイラルケーブル
(Φ2.5mm金メッキプラグ着脱式)
約1.2m(Y型) / Φ3.5mm金メッキプラグ(L型)銀メッキ線スパイラルケーブル
(Φ2.5mm金メッキプラグ着脱式)TYPE EイヤーピースSS,S,L,LL(Mサイズは本体に装着)
イヤーフック、専用キャリングケース、取扱説明書、保証書CR-V1 仕様
素材:チタン合金(フロントハウジング)、アルミニウム(センター・リアハウジング)
ドライバーユニット:Φ10mmダイナミック型
音響方式:密閉型
出力音圧レベル:105dBSPL/mW
周波数特性:20Hz~20kHz
最大入力:200mW
公称ユニットインピーダンス:32Ω
質量:約15.8(ケーブル含まず)