始発電車に飛び込んで 5年ぶりに彼の地へ来た
新幹線が開業したおかげで移動時間は縮まったけれど距離が縮まったわけではなく
相変わらず少し後ろ向いた空気を感じる
悲しい思いをする暇もないくらい という誰もが言うセリフの通り
あれよあれよと背中を押されていく姿を ただぼんやり眺めていた
火葬場は車で15分ほど 山道を登った先にあった
耳鳴りのしそうな部屋の壁には いくつかひび割れをみつけた
姪っ子の小さな手を握って外へ出てみると
昨日雪が降っていたなんて信じられないような青い空が広がっていた
冬の間厚い雲が覆うこの街では珍しいことだと顔の知らない親戚が言っていた
少し歩くと 目の前には白く覆われたこの町が遠くまで見渡せる
ああ だから 高い場所にあるんだなと 自分に教えるように呟いていた
もう一度空を見上げると どこまでも高く深く続いていた
今日は誕生日なのだという